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これまでの活動

発言例全文紹介①

日時:2013年6月7日(金)
場所:ドイツ連邦議会(ベルリン)
会議名:GLOBE自然資本サミット

『日本の衆議院議員、百瀬智之です。この場において、発言の機会を頂けることを大変嬉しく思いますとともに、素晴らしい場所を提供して頂いたドイツ議会、この会合に向けご準備をされてきましたGLOBE自然資本イニシアティブのリーダー、バリー・ガーディナー議員、また事務局に対しまして敬意を表したいと思います。私からは、自然資源の価値を評価し、それを国家的な勘定枠組みに組み込むことにおいての、今までの日本の取組みをご紹介したいと思います。また日本における経験から、自然資本の経済価値評価を進めるうえで留意すべき点がいくつかございますので、それをなるべく簡潔に述べたいと思います。

日本では、1991年から環境と経済活動の相互関係を反映する勘定体系を確立するための研究が行われてきました。これは内閣府の経済社会総合研究所においてされてきたものです。1993年に国連がSEEAを提唱してからも、その枠組みを取り入れながら、日本の実情に合わせた日本版の「環境・経済統合勘定」の構築を目指して参りました。その後、環境負荷を貨幣換算していくプロセスにおいて問題を抱え、オランダのNAMIA、2003年版のSEEAと同様に、経済活動に伴う環境負荷を物量的に並列表記する形に変更しました。これを「経済活動と環境負荷のハイブリッド型統合勘定」と呼んでいます。日本版NAMIAともいえるでしょう。日本版では汚染物質や廃棄物におけるサービスの供給や消費を記載していることや、輸入による海外の資源の減少も考慮していることなど、ユニークな点がいくつかございます。この日本版の統合勘定については、1990年、1995年、および2000年について試算推計を行っています。また、より綿密なプロトタイプを作成するために、そして改善点の洗い出しのために、兵庫県をパイロットエリアとしてスタディを行いました。このように、日本においても、環境と経済の統合勘定システムについては長らく研究が続けられて参りました。ただ国連や他の国でもいえるように、自然資本をいかに貨幣評価し、既存のGDPの代替指標を作り上げるのかという点において、未だに大きな課題を抱えていると申し上げておきます。

生態系の価値を経済的に捉える風土は、日本には古くからございました。記録では1784年、上流にある村が山林の伐採をローカル政府に対して出願しましたが、下流の24の村が反対をしました。伐採によって雪解けが早くなり、農業用水が不足すること、また雨の際に土砂流出などのおそれがあることが理由でした。結果的に上流の村は伐採を中止し、下流の村は毎年、今の金額にして10万ドルから20万ドルのお金と600キログラムのお米を上流の村に支払うことになりました。下流域の生活の糧となる生態系が、上流域の生態系に支えられており、その経済的な価値が下流域で生活する人々に認識されていたことを表す出来事です。

2011年の国際森林年に、国連からフォレストヒーローとして、日本の沿岸で漁業を営む漁師が選ばれたことも象徴的な出来事だったといえるでしょう。彼は漁師でありながら山に木を植え続け、その重要性を世界に訴える漁師の一人でした。私は農業の盛んな地域を代表する議員ですが、農地というのは生態系循環の一部として機能しています。収穫利益はもとより、物質循環機能、水・大気の浄化機能、生物多様性の保全機能など、農地それ自体にも大きな経済価値が潜在しています。またもっと大きな連環で見ると、健全な農地の運営は下流域の水質改善、栄養分の供給など下流域への好影響を及ぼし、悪質な農地の運営は下流域において排水汚染や栄養過多などを引き起こします。

TEEBの報告書を見ると、沿岸、河川、サンゴ礁、熱帯雨林、草地、湿地など、それぞれの金銭的価値が分析されております。河川や草地が漁業に及ぼす影響など、異なるカテゴリーの生態系の相互作用にも触れられていますが、この点は注目すべきだと思っております。何故なら広いエリアで互いに連環しあう生態系には、数多くの省庁の管轄がまたがって存在するからです。国土交通省河川を開発する場合に、農林水産省が管轄する下流の漁業を考慮しない場合もあるでしょう。その意味において、省益を超えた判断をする政府機関や委員会が必要になってきます。また立法府として、政府の監視をする際にこういった横断的な視点を持つ必要があるでしょう。今後GLOBEの各国の議員の間で、どのように生態系の経済的価値を国民経済計算に組み込んでいくのかという技術的な知見。さらにどのようなポストや機構をつくっていくのかという組織的な知見を共有していくことは、自然資本会計を推進していくうえで我々が持つユニークかつ重大な役割となるでしょう。これらの課題を我々が一致団結して乗り越えていくことが重要です。以上、本サミットを契機に世界各国でますます取組みが進展することを願い、私の発言を終わります。ありがとうございました。』