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「子どもを性被害から守るための条例」

18歳未満との性行為などへの処罰規定を盛った県の

「子どもを性被害から守るための条例案」が昨日、

県会6月定例会の本会議で採決され、賛成多数で可決、成立しました。

私は賛成の立場から討論しました。

以下、私の討論内容全文です。

制限時間は「およそ5分間」です。

原案について賛成の立場から討論致します。

まず、条例を制定する際には、「立法事実」、すなわち、立法的判断の基礎となっている事実が何であるかを考える必要があります。この点、長野県には伝統的に、「青少年の健やかな育成を県民が見守るべき。条例で規制すべきではない」という考え方があるものの、最近ではLINE等の通信手段が発達し、インターネットが広く普及している現状からすれば、子どもは簡単に成人と会うことができ、逆に、成人も子どもにアクセスしやすい状況になっており、県民が見守るだけでは青少年を保護できないという現実があります。このような状況下で、長野県内のみならず他県から来る「悪意ある大人たち」を県民の目だけで排除するのはほぼ不可能であり、これら立法事実の存在自体については、ほぼ争点化しなかったと記憶します。

主に争点化したのは、ひとつに処罰規定について冤罪のおそれがあるのではないか、ということです。そこでまず実体法上の観点から検討するに、犯罪の成立要件は①構成要件該当性②違法性の存在③責任の存在であるところ、構成要件該当性については理事者から繰り返しの説明があった通り、最高裁の判例基準よりも相当に厳格な文言が用いられています。明確性の原則、ひいては罪刑法定主義や憲法31条に反するとは言えません。いわゆる「真摯な恋愛関係」であった場合に万が一、構成要件に該当したとしても、②③の要件で犯罪が成立しないことになります。違法性は、当該犯罪の処罰を基礎づけるだけの質と量を求められますから、それがないとされれば違法性が阻却され、あるいは犯罪事実の認識・予見がなければ責任が阻却され、結局犯罪は成立しません。実体法上は万が一にも冤罪は生じ得ないわけです。

では、手続法上の観点からどうかということです。例えば、本処罰規定は、証拠の収集が困難な犯罪類型であるから、冤罪を生みやすいという意見があります。この意見は袴田事件、足利事件等の報道を受けてか、捜査機関が証拠もないのに検挙して無実の者を処罰することがあるという考えからきていると思われます。
確かに、歴史的に見れば、冤罪の抽象的な可能性があること自体は否定できません。が、結論から言うと、証拠の収集が困難=冤罪を生みやすいという関係にはありません。証拠が収集できないのであれば、逮捕できませんし、もちろん有罪にもなりません。というのは、刑事手続において、捜査機関が被疑者を逮捕する際には、通常、逮捕状が必要であり、この逮捕状は中立公正な立場にある裁判官が発付するものです。捜査機関がいくら逮捕したいと言っても、証拠によって疎明される犯罪の嫌疑がなければ逮捕状は出ません。よって意に反する取調べが行われることもありません。
百歩譲って、仮に逮捕状が出る程度の疎明資料があり、逮捕されたとしても、次は検察官が証拠の有無を精査し、起訴不起訴を決するのですから、有罪立証に足りる証拠がなければ起訴できませんし、無論有罪にもなりません。
ですから、本処罰規定が仮に証拠の少ない犯罪類型であるという前提に立っても、イコール冤罪を生むという関係にはありません。冤罪のおそれということに関して言えば、どの犯罪においても大きな差はないのです。
また、そもそも、本処罰規定が証拠の収集が困難な犯罪類型であるという点にも疑問があります。確かにホテル等密室で犯行が行われる点においては、密行性が高いと言えますが、被害者と被疑者間のLINE等の通信アプリ、メールのやりとりや、通話明細のほか、ホテルであれば防犯カメラ、利用履歴等の客観証拠の収集が可能であり、類型的に証拠が少ない犯罪とは言えません。犯罪類型ということからすれば、児童福祉法も同じですが、問題なく立法化されている点にも注目すべきであります。

以上の通り、実体法と手続法それぞれの観点から、「冤罪のおそれ」を合理的に説明することは困難であり、それらは漠然とした不安感の域を脱し得ません。同様に、議会の内外で指摘されているいくつかの懸念も、「むべなるかな」と思う所は確かにあるものの、県議会において法的観点から合理的かつ有力な反対意見を形成するには至っておらず、結論として原案に賛成するのが相当と考えます。
最後に、一口に県民運動と言っても、その内容を具体的に想起できる世代は確実に少なくなっています。24時間、全方位からの脅威に対する現実的対応として、あるいはこれまでの枠組みを再構成するための契機として本条例案が投じた一石に、私も新たな希望と期待を寄せます。と申し添えまして、原案に対する賛成討論と致します。